いつからこんな欲張りになったのだろう。
はじめは姿を見かけるだけで幸せな気持ちになった。
なんだか彼が四つ葉のクローバーとか流れ星みたいに見えた。
視界の端に入っただけで、まるで彼が不思議な力をもってるみたいに一日中ごきげんだった。
何度も見かけるうちにあいさつをかわすようになった。
彼の声はどんな騒音の中でもどんなにたくさんの人声の中からでも見つけられる気がした。
彼の口から出る言葉は不思議な呪文みたいだった。
私は姿だけでは我慢ができなくなった。
声が欲しくなった。
言葉を交わすうち、私たちは友達になった。
ときおり触れる彼のぬくもりに気恥ずかしさとめまいを覚えた。
彼がそばいにいるだけで毎日が楽しかった。
世界中のどんな不幸にさえも耐えれる気がした。
もっといっしょにいたい。
私たちが「こいびと」になっても
私の欲望は尽きない。
どんなに長く一緒にいても足りない。
さっき会ったばかりなのにもう会いたい。
はじめは姿を見るだけでもあんなに幸せだったのに…。
時々自分が怖くなる。
どんどん欲張りになっていく自分に、尽きない欲に怖くなる
最後は一つになるまで?
ほらね、もう私の足は靴をを履いてかけだした。
時間がまるで一瞬みたいに感じちゃう。
君もそうだといいな。
玉かぎる ほのかに見えて 別れなば
もとなや恋ひむ 逢う時までは
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「こいのうた」シリーズと題しまして『恋歌』をテーマにショートストーリーを書いてみようと思います。
さて、今回の詩は『七夕詩』より山上憶良の歌です。山上憶良さんといえば愛妻子煩悩の代名詞『子泣くらむ~』で有名な万葉調の歌人です。
この歌の解説。
玉かぎる ほのかに見えて 別れなば もとなや恋ひむ 逢う時までは
ほんの少し見ただけであなたと別れてしまったならば、むしろ、また逢う日まで無性に恋しく思うのでしょうね。
『玉かぎる』は宝石がきらりと光るような一瞬→ほんの少しという訳です。
七夕歌ですので織姫と彦星をテーマに詠まれた歌です。
今回は月草的解釈で「逢う時間を物足りなく感じてしまう女の子」をかいてみました。
過去日記転載。
実はぽろぽろいろんなとこに書き散らしてる『恋の歌シリーズ』…。
この機会にまとめてみようかなぁ。